神在月 出雲大社 |「縁結び」の地、出雲に八百万の神々が集まる! 第6回 |「大国主命 サクセスストーリー 完結編」

神々のお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。

前回は、少彦名神(スクナビコナノカミ)という最強のパートナーを得て、人々に農耕や漁業、産業や医薬の道など、様々な知恵を授け広めて、国を豊かに発展させいくお姿を…。
そして少彦名神(スクナビコナノカミ)が去った後も、挫けることなく自分自身の中に潜む「幸魂奇魂」の霊力によって『国造り』の偉業を成し遂げられた大国主命のお姿をお伝えさせていただきました。

数々の試練を乗り越えてきた、大国主命のサクセスストーリーは今回の完結編で、いよいよクライマックスを迎えます!
大国主命の偉業とも言える『国造り』『国譲り』、そして『国譲り』よって出雲大社が誕生する…。

ここでは、『国譲り』のお話をしていきたいと思います。
誰に国を譲るのか?
どのようにして国は譲られたのか?
国を譲って、大国主命はどうなってしまったのか?など…。
大国主命の集大成ともいえるお話です!

それでは始めましょう…

瑞々しく美しい稲穂が実る、あの国が欲しい!

大国主命は国造りによって、葦原中国(あしはらなかつくに=日本)を豊かな広々とした葦原のように、瑞々しく美しい稲穂が実る国として成長させたのです。
この豊かになった葦原中国(あしはらなかつくに=今の日本)は、古事記でも『豊葦原の瑞穂の国 (とよあしはらのみずほのくに)』とも記述されています。

その様子を天津神(高天原の神々)が住んでいるとされる高天原(たかまがはら)という、天上界より見下ろす神がいました。
高天原(たかまがはら)の主宰神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)です。

天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、大国主命が造り上げた葦原中国(あしはらなかつくに=日本)を見て、「あの豊かな実りのある葦原中国こそ、わたしの子孫が治める国にふさわしい。」と言い出すのです。

そして、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の第1子である天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)が葦原中国(あしはらなかつくに=日本)を支配することが決定され、天から降ろされたのでした。

しかし、天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)は、地上に向かう途中、高天原(たかまがはら)と地上界の間に架かっていたといわれる天の浮橋(うきはし)に立ち、下界を見下ろしました。
そして地上界を見て、「この国は、荒ぶる神々が多く、まだ随分と騒がしいようだ。」と言うと、高天原(たかまがはら)に戻り、天照大御神(アマテラスオオミカミ)に地上界の様子を伝えます。

そこで天照大御神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の命令で神々が集められました。
高御産巣日神(タカミムスビノカミ)は日本で2番目に生まれた神で、天上界のトップである天照大御神(アマテラスオオミカミ)にも頼られています。
実際に、高御産巣日神(タカミムスビノカミ)最高神説もあるのですが、一般的には簡単に言うと、高天原の最高神が天照大御神で、最高司令官が高御産巣日神だと言われています。

そして、「あの国は、私の息子である天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)が治める国です。しかし息子は、あの国には乱暴な神が大勢いると言っています。一体どの神を遣わして、あの国をおとなしくさせたらよいでしょうか。」と言って、対策を立てさせるのでした。

高天原は続けて、神を送り込む

そこで遣わせられたのが天照大御神(アマテラスオオミカミ)の第2子である天穂日命(アメノホヒノミコト)でした。
兄が葦原中国(あしはらなかつくに=日本)を治めるために、乱暴な神をおとなしくさせるという命を受けて、颯爽と地上界へ向けて降りて行ったのです。

しかし、三年の月日が過ぎても何の音沙汰もありません。
なぜか?…。
実は、この天穂日命(アメノホヒノミコト)。
地上に降りると、大国主命の偉大さに惚れ込んでしまい、地上界で仲良く暮らしてしまうのでした…。

(長男は途中で引き返し…)
(次男は行ったきり、戻ってこない…)
(地上界は、一筋縄ではいきません…)

そこで天照大御神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスビノカミ)は再び神々を集め、今度はどの神を遣わせるのがよいのかを考えます。
そして次に送り込まれたのが、天若日子(アメノワカヒコ)です。
天若日子(アメノワカヒコ)には、鹿を殺すほどの威力のある弓と、大きな羽の付いた矢が授けられたのです。

天若日子(アメノワカヒコ)は、国譲りの交渉をする為に、大国主命のもとにやってきます。
そして交渉に入ります!
果たして、その結果は?…。

天若日子(アメノワカヒコ)は…。
結婚しました!

(一体、どうしちゃったのですか?…。)
(三度目もダメでした…。)

天若日子(アメノワカヒコ)は、大国主命の娘である下照比売命(シタテルヒメノミコト)と結婚するのです。

苛立つ高天原は、伝令を飛ばす!

八年経っても、天若日子(アメノワカヒコ)からは何の音沙汰もなし…。
そこで伝達として遣わされたのが、鳴女(なきめ)という名のキジでした。
鳴女(なきめ)は、天若日子(アメノワカヒコ)のもとまで飛んでゆくと、家の門の木の枝にとまり、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の言葉をそのまま伝えます。

『おまえを葦原中国に遣わしたのは、この国の荒ぶる神々を説得して、従わせるためである。どうして八年経っても帰ってこないのだ』

天若日子(アメノワカヒコ)に仕えていた天佐具売(アメノサグメ)は、このキジの鳴き声を聞くと、天若日子(アメノワカヒコ)に進言します。
「この鳥は、ひどく鳴き声が悪いので射殺すべきです。」
すると、天若日子(アメノワカヒコ)は天の神々より与えられた弓と矢を持ち出し、鳴女(なきめ)を射殺してしまうのでした。

キジを射抜いた矢は、天の天照大御神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスビノカミ)のもとまで届いてしまいました。
高御産巣日神(タカミムスビノカミ)は、その矢を手に取ると、矢に血がついていることに気付きます。
「この矢は、天若日子(アメノワカヒコ)に与えた矢ではないか。」
そう言って、高天原の神々に見せると、
「この矢は、天若日子が命令どおりに荒ぶる神に向かって放たれた矢なのであれば、天若日子には当たらない。しかし、命令に背いて放った矢なのであれば、天若日子はこの矢の禍を受けよ。」と言って、その矢を投げ返すのでした。

その矢はどうなったかというと…。

朝方になってもまだ寝ていた天若日子(アメノワカヒコ)の胸に刺さり、天若日子は絶命してしまいます。

(さすが最高司令官、すごい力をお持ちです!)

結局、天より遣わせられたキジは帰ってきませんでした。
このように、行ったきりで戻ってこない使いの事を「雉子の頓使い(きぎしのひたつかい)」というようになりました。

業を煮やした高天原は、強行策に出る

一向に進まない国譲りの交渉。
業を煮やした高天原は、ここで強行策に打ってでます。
次に派遣されたのは、武闘派の建御雷神(タケミカヅチノカミ)と天鳥船神(アメノトリフネノカミ)の二柱の神です。
二柱の神は、伊耶佐(いざさ)の小浜(現在の稲佐の浜)に降り立ちます。

建御雷神(タケミカヅチノカミ)は長い剣を抜き、海の波に逆さまに刺し立てると、剣先の上にあぐらをかいて座り、大国主命に向かって言います。

「私は天照大御神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスビノカミ)に遣わされてやってきました。」
「天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、『あなたの治めている葦原中国(あしはらなかつくに=日本)こそ、私の子孫が治める国にふさわしい』と仰せになられていますが、あなたのお気持ちをお聞かせください。」

これに対して大国主命は答えます。
「私にはお答えすることが出来ません。」
「代わりに私の子である、事代主神(ことしろぬしのかみ)がお答えしますが、今は美保の岬まで魚釣りに行ってしまって居りませぬ。」

これを聞いた建御雷神(タケミカヅチノカミ)は、天鳥船神(アメノトリフネノカミ)を遣わせ、事代主神(ことしろぬしのかみ)を呼び寄せると、同じように問いかけます。
すると事代主神(ことしろぬしのかみ)は、父である大国主命に「恐れ多いことです。この国は、天津神の御子に差し上げましょう。」と言うのでした。
そして、乗っていた舟を踏んで傾け、天の逆手(あまのさかて)を打ち、舟を青柴垣(あおふしがき)に変えてしまうと、恐れのあまり、その中に隠れてしまいました。

建御雷神(タケミカヅチノカミ)は、ここでもう一度、大国主命に問います。
「事代主神(ことしろぬしのかみ)は同意しましたが、他にこの命令を申し伝えておくべき神はいますか。」

すると大国主命は、「私の子に、建御名方神(タケミナカタノカミ)がいます。この子をおいて他にはおりません。」と言いました。
その時、千人で引かないと動かないほどの大きな岩を、手の上で転がしながら持って現れた神がいました。
これこそ、建御名方神(タケミナカタノカミ)です。

天上界の武神 VS 地上界の武神

建御名方神(タケミナカタノカミ)は地上界最強とも言われる武神です。
これによって、天上界の武神 VS 地上界の武神という対戦カードが出来上がってしまうのです。

バトル開始!
先制攻撃は地上界の武神「建御名方神」
「誰だ!オレの国にやって来て、コソコソとやっている奴は!それなら、オレと力くらべをしようじゃないか!」
建御名方神(タケミナカタノカミ)は言い放つと、建御雷神(タケミカヅチノカミ)の手を取るのでした。

すると、建御雷神(タケミカヅチノカミ)の手は、氷柱(つらら)に変わったかと思うと、たちまちに剣へと変化したのです。
天上界の武神「建御雷神」の反撃です!

これに驚いた建御名方神(タケミナカタノカミ)は、後ずさりします。
そこを逆に手を掴まれ、握りつぶされると、そのまま投げ飛ばされてしまいました。
もう、一方的です。

恐れた建御名方神(タケミナカタノカミ)は、たちまち逃げ出してしまいます。
それを追う、建御雷神(タケミカヅチノカミ)。

(字が似ています!混乱しないで下さい!)

追いかけっこはひたすら続き、建御名方神(タケミナカタノカミ)は信濃の国(長野県)の諏訪湖まで追いつめられ、いよいよ殺されそうになりました。
さすがの建御名方神(タケミナカタノカミ)も堪らず、「恐れ多いことです。私を殺さないでください。私は、この地より他にはどこにも行きません。これからは、父の大国主命ご命令にも、兄の事代主神(ことしろぬしのかみ)の言葉にも逆らいません。この葦原中国(あしはらなかつくに=日本)は、天津神の御子に差し上げましよう。」と言って降参するのでした。

『国譲り』によって、巨大神殿は誕生した!

決着がつくと、建御雷神(タケミカヅチノカミ)は再び大国主命のもとに戻り、再度、問いかけます。
「あなたの子である、事代主神(ことしろぬしのかみ)も建御名方神(タケミナカタノカミ)も天津神の御子に従い、背くことはないと言っていますが、あなたの気持ちはどうですか。」

大国主命は答えます。
「私の子である二柱の神が同意したのでしたら、私もご命令に従い、この葦原中国(あしはらなかつくに=日本)は差し上げましょう。」

長い年月、神を遣わし続けた高天原(たかまがはら)でしたが、4度目の派遣にして、ついに天照大御神(アマテラスオオミカミ)の子孫に譲られることとなったのです。

しかし、それには条件がありました…。
大国主命は続けて言います。

(ただでは引き下がりません!)

『ただし私の住まいは、天津神の御子が住む御殿のように、宮柱を太く建て、高天原まで千木が届くように高くしてお祭りくだされば、私はその中でおとなしく隠れておりましょう。また、わたしの子である百八十神(ももやそがみ)は、事代主神(ことしろぬしのかみ)が、率先して天津神(あまつかみ)の子孫に仕えるのであれば、それに従わない者はいないでしょう。』

こうして出雲の国の多芸志の小浜(たぎしのこはま=出雲市の海岸)に、出雲大社は造られたのです。

出雲の地に八百万の神々は集まることとなる

任務を終えた建御雷神(タケミカヅチノカミ)は高天原(たかまがはら)に戻り、葦原中国(あしはらなかつくに=日本)の平定を最高神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)と最高司令官の高御産巣日神(タカミムスビノカミ)に報告するのでした。

『国造り』という偉業を成し遂げ、そして平和的にその国を明け渡す『国譲り』をされた大国主命の功績に、天照大御神(アマテラスオオミカミ)は喜び称えたといいます。
そして、大国主命に『これから後は、この世の目に見える世界の政治は私の子孫があたることとしますが、あなたは目に見えない世界「幽冥(かくりごと)」を司り、「むすび」の御霊力によって人々の幸福を導いて下さい。』と仰せになられたのです。

こうして、大国主命が目に見えない世界『幽冥(かくりごと)』の主宰となられたことから、八百万の神々は大国主命の住む出雲の地に集まり、人のご縁だけでなく、お金や仕事の事など、世の中のありとあらゆるご縁を『神議り(かみはかり)』によって決められることとなったといわれています。

大国主命のサクセスストーリーは、『国造り』『国譲り』、そして、巨大神殿の誕生によって締めくくられました。
この偉大なる神様、大国主命が御鎮座される出雲大社に、是非、足を運んでいただき参拝し、大きなおかげを頂かれてはどうでしょう。

『国譲り』を終えると、いよいよ高天原(たかまがはら)から葦原中国(あしはらなかつくに=日本)に国を治めるために、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の子孫が降臨なされます。
『天孫降臨(てんそんこうりん)』です!

この『天孫降臨』、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の長男、天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)が降臨される予定であったのですが、実はまた違う神が降臨されることとなるのです。
それは、また別の機会に…。

出雲大社にお集まりになられた八百万の神々は、神楽去出祭(からさでさい)が終わると、出雲大社をお立ちになられます。
その後は、出雲地方の神社を巡られ、まだしばらくは、この出雲の地にとどまられるのです。
次回は、八百万の神々は出雲大社をお立ちになられた後、どこに向かわれるのか?を、お話したいと思います。

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